建築 雑コラム 6
Architecture The s Column
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「設計ツール」
現在建築の図面を書くのに私の机にはデスクトップのパソコンがあるだけである、図面も文章も写真も
すべてパソコンで済ます時代になった。
便利なのは承知だが何か忘れて行った様にも思う。
そこで設計にかかわる道具を少し思い出して記したいと思う。(2012.5.15)
私が大学1年生の1972年当時大学の製図室はドラフターでした。
私や友人も家や下宿にドラフターを持っていました。
当時友人の下宿は4帖半の部屋が多く半帖の土間と一帖の押入れが付いていました、
台所と便所は中廊下奥の共同で隣に共同の風呂を一日おきに順番で使っていました。
名古屋で6000円〜8000円/月の家賃でした。
4帖半の部屋でドラフターを置くとドラフターの下に足を入れて寝るような状態でした。
(2012.5.16)
図面は鉛筆書きで鉛筆を回しながら描く練習をしました。
重要な図面はインキングといってロットリングでインキングしていました。
工業高校から来た同級生は工業高校で烏口(からすぐち)を八の字で研ぐことも習っていました。
私は烏口は使った事はありませんがコンパスと一緒にセットで持っています。
たぶん烏口からロットリングに変わった初代位の時期だと思います。
コンパスセット(烏口付) 烏口 (烏口のコンパスもあった)
ロットリング
烏口で書いた線は二本線の真ん中にインクがのりますが、ロットリングは中心線にインクがのります
ですから図面の線を見ると、どちらで描いたか分かります。(2012.5.17)
コンパスは皆さんも知ってみえると思いますが、円を描く道具です。
CADの世界ではコンパスもいらなくなったのですね!
写真の上のコンパスは定規に芯部分と鉛筆部分を挟み使うもので大きな円を描くときに使います。
コンパスの鉛筆芯は平たく削りました。
コンパス
コンパスに似ているのですがこれはデバイダーという道具です。
同じ寸法の物を繰り返す時に使います。
右のX状のデバイダーはXの芯を調節する事で倍数が変わり、たとえば1/100から1/50の図面に移せます。
デバイダー
(2012.5.18)
ドラフターは道具に使われている感じがしてあまり好きではありませんでした。
LAND建築事務所では昔からのT定規で図面を書きました。
T定規は使わない時は外せるし慣れると意外に便利でした。
T定規、製図版の側面に左の黒い部分を当てて左手で操作し平行線が書ける。
左より60度三角定規、45度三角定規、勾配定規(角度が自由になる定規)
(2012.5.19)
中建築設計事務所以降独立して私の事務所でCADになる以前までは平行定規を使っていました。
ワイヤータイプの平行定規と勾配定規
平行定規はシンプルで一番使い易かったように思います。
(2012.5.20)
筆記具も最初は鉛筆を使いました。それからステッドラーのホルダーそしてシャープペンシルと変わってきました。
これらも使うことが少なくなりました。 消しゴムもステッドラーのを使ってました。
筆記具同様良く使うのがスケールで三角スケールは縮尺が6個付いていて便利です。
LAND建築事務所では1/100と1/30の竹の物差しを半分に割り薄くして自分に合ったスケールとして使っていました。
この2本あればほとんど変換して使えました。
筆記具 下から消しゴム、鉛筆、ホルダー、シャープペンシル スケール 下から手製竹物差し、三角スケール 小、大
手製竹物差し
現在はCADで原寸の世界で図面を書いている以上にスケールは正確になっています。
良いのか?悪いのか?(2012.5.21)
消しゴムを使った時は刷毛で払います。鳥の羽の刷毛もありました。
刷毛 鳥の羽の刷毛
こんな道具もあります
ホルダーの芯を削る芯削り (2012.5.22)
自由曲線を描くのは大変でいろんな道具があります。
描きたい曲線部分に近い定規を選択します。
一般的には雲形定規またはアール定規を使います。
雲形定規 アール定規
曲率が一定で大きな円は曲線定規を使いました。
曲線定規(2012.5.23)
便器や洗面などはTOTOやINAXから専用の型板が設計事務所に配られていました。
スケールは1/200,1/100,1/50,1/30と型板だけでかなりの枚数ありました。
(2012.5.23)
図面を描く紙はトレーシングペーパーと言って透けた紙です。
スケッチの上に紙を重ねて上に上にと書いていくのが便利な紙です。
またこの紙に書かれた図面を原紙と言って青焼きしました。
左にあるのが巻紙の洋紙トレーシングペーパー、 中央が私の事務所の和紙のトレーシングペーパー ドラフティンウテープ
トレーシングペーパーは四隅をドラフティングテープで止めましたが、
スケッチの時は紙を重ねて写真の様にオモリを使うこともありました。(2012.5.24)
和紙のトレーシングペーパーは薄くてしなやかで、折り曲げて保管しても折り目が青焼きに出にくかったり、描き心地が気に入ってたりして
私の好みでした。(2012.5.25)
トレーシングペーパーで書き直すのは数回が限度で図面を描く前に書きあがった図面を想定して位置決めをして書き始めなければいけません、
初心者のころはこの位置決めに失敗して紙から図面がはみ出す結果となり書き直す経験は多くの設計者が通ってきた道だったのですが
今のCADでは書き始めてから移動して位置を決めている様になりました。
賢くなったのか便利になったのか?(2012.5.26)
青焼き機は薄緑色した感光紙と原紙を重ねて機会に入れて紫外線蛍光灯で焼き付け感光させてジアゾ液につけて着色する機械です。
機械はリコー、キャノン(コピアを吸収合併)で出していましたが現在では生産中止となっています。
線は青い色で出てきますので青焼きというのでしょう。
初期はジアゾ液ではなくアンモニア液で発色していましたが、アンモニアは刷り上がった後もにおいがきつくて抵抗がありました。
1980年ぐらいからジアゾ液が主流となったと思います。しかしジアゾ液よりアンモニア液の方が発色が良いので
青焼きを専門の職業としている青焼き屋さんはアンモニアをずっと使っていました。
青焼き屋さんはかなり多くの部数を焼いたり製本を作る時にお願いしていましたが、今は少なくなりました。
青焼き機(2012.5.27)
CADへの移行は私の事務所は1992年くらいからだと思います。
当初はNECのDOSで動くパソコンで最初にCOFIG.SYSなどの設定を文字で打ち込まないと動きませんでした。
PCとモニター 5インチディスクのDOS PC フロッピーになったDOS PC
パソコンも当初は記憶装置が5インチでした最初に買ったパソコンは高価で47万円ほどしました。
現在はモニターも一体化されたものを使っています。キーボードもマウスも無線です。価格も全て付いて7万程度になりました。
記憶装置も5インチからフロッピーディスクにそしてMDになりハードディスク、CD,DVD,USBメモリー、メモリーカードなど多彩に変化しています。
ブラウン管モニター 液晶モニター 現在使っているディスプレー一体型パソコン
モニターも最初はブラウン管でしたが今は液晶モニターに変わっています。
ブラウン管の画面は今見ると線がぼやけていてよくこんなもので作業をしていたものだと感心します。
そのお陰で近眼がこの歳でかなり進みました、老眼の方は年相応にこれも進んでいます。(2012.5.28)
プロッターも最初は鉛筆(シャープペン)で描くXYプロッターでした、1枚の図面を打ち出すのに3時間ほどかかり
その間に鉛筆の芯が折れたりすると交換しなければいけないので番をしているという機械に使われている時代でした。
XYプロッター 現在使っているインクジェット式カラープリンター
現在は二代目のインクジェット式大型プリンターでA1の白黒、カラーどちらでも印刷できます。
しかしプリンターでは私の好きな和紙のトレシングペーパーは使えなくなりました。
青焼きもなくなりましたのでトレシングペーパーにする必要もなくなりましたので和紙洋紙とこだわることもなくなりましたが!
(2012.5.29)
私は昭和29年(1954)生まれで団塊の後の世代になります。
私の同級生はほとんどCADを使いますが、私より数年上の団塊の世代はCAD移行率が半々位となり
団塊の世代がCAD移行分岐点と言って良いのではと思われます。(2012.5.30)
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