建築 雑コラム 18
Architecture The s Column
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スペインの建築 2
バルセロナで見た現代建築を紹介します。
高くて異様な紡錘形をしていますのでよく目立つ、フランスの建築家ジャン・ヌーベルが設計したトラ・アクバルです。(地下鉄L1Glories)
トラ・アクバル (2014.3.17)
水道局のオフィースビルですが塔状になっていますのでサクラダファミリアからも良く見えます。
赤と青を中心にカラフルに色を塗られた外壁(波板鉄板の様な)の60cmほど外側にもう一枚ガラスルーバーで覆った建物で
遠くから見るといろんな色がガラスルーバーを通してイレギュラーに見えて面白さは理解できるのですが、近くに寄ってみると
納まりの悪さと素材の安っぽさを私は感じました。(2014.3.18)
多分ガラスルーバーを取り払うとみられない姿の建物が現れるのではと思います。
外壁詳細 近づくと雑さが目立つ エントランス このデザインもいまいち足りない(2014.3.19)
この紡錘形の建物はイギリスの建築家ノーマンフォスターがロンドンに建てたスイス・リ本社で最初に取り入れた形でした。
ジャン・ヌーベルの作品ではパリで見た「アラブ世界研究所」は密度があり衝撃を受けましたが、期待はしているのですがそれ以上の作品に出会っていません。
ジャン・ヌーベル (1945 − ) (2014.3.20)
この建物の近くに作者は不明ですがレム・コールハス風アクロバットの建物
トラ・アクバルの対面にある巨大なキャンティーのアクロバット建築(作者不明)(2014.3.21)
鏡面ステンレスの覆いの建築資材置き場がありました、いずれも作者は不明です、どなたかご存知の方は教えてください。
トラム Glories駅前にある 鏡面ステンレスの覆い屋根建築(作者不明)(2014.3.22)
ローダ・フェリペU世橋(地下鉄L2Bach De Roda)は現代のスペインを代表する建築家サンティアゴ・カラトラバの吊り橋で中央に膨らみのある
とてもきれいな形をしています。
サンティアゴ・カラトラバ ローダ・フェリペU世橋(2014.3.23)
もう一つサンティアゴ・カラトラバの作品を紹介します。
モンジュイックタワー
バルセロナオリンピックでモンジュイックの丘に造られたオリンピック村にあって、オリンピック用の中継通信搭です。
鉄塔と言うより、巨大なオブジェですが、単なる鉄塔よりこの方が美しくて面白い、モダニズムではないがこれもありと思います。(2014.3.24)
隣に磯崎新の屋内競技場パラウ・サン・ジョルディがあります。
モンジュイックタワーの隣では普通すぎてインパクトが足りない。 磯崎新 (1931- )(2014.3.25)
モンジュイックの丘にはフニクラ(ケーブルカー)に乗って山頂に、
ミロ美術館から下ってオリンピック村があり、
少し下って
カタルーニア美術館(エジプト、メソポタミア、キリスト教芸術など歴史的な作品、またピカソ、ミロ、ダリなど充実した収蔵がある)があって
また下ってミースの
バルセロナパビリオンに辿り着くコースとなっている。
今回のスペイン旅行で見た現代建築ではサンティアゴ・カラトラバの建築が一番良かったと私は思います。
この後のビルバオ編で詳細を書きますのでお楽しみを。(2014.3.26)
磯崎新のもう一つの作品がミースのバルセロナパビリオンの向えにあります。
モデルニズモの建築家プッチ・イ・カダファルクの繊維工場を文化センターにリモデルした作品でエントランスを地下に持って行って外観を維持させています
カイシャ・フォーラム・バルセロナです。
リモデルとして、とても良い作品に仕上がっていて私は好感を持ちました。
カイシャ・フォーラム(文化センター) 磯崎新(2014.3.27)
日本人続きでホテルの前にありました、伊東豊雄のエキビジョンホール(地下鉄 EuropaFira)
フィラバルセロナ・エキビジョンホール 伊東豊雄 (1,941‐ )
大きな建物ですが、中に入ると密度を感じない建物でした。(2014.3.28)
もう一つ期待して見に行ったのですが、少し期待はずれでした建物は、
スイスの建築家ユニットのヘルツォーク&ムーロンのフォーラムビルでフォーラム会場、劇場、博物館の複合施設です。
フォーラムビル(トラムT4 Forum)(2014.3.29)
この建築家ユニットは日本で私が最初に勤めたランド建築事務所のあった表参道のすぐ近くにプラダ青山店を設計しました。
また北京オリンピックでは鳥の巣の会場を創っています。
ヘルツォーク&ムーロン (1950− )
表皮のデザインにこだわった作品が多く密度の高さも興味を持っていました。
このフォーラムビルも外壁の吹付けモルタルの様な荒い素材感を持つキュービックぽく見えるマス(本当は三角の平面をしている)が傾斜を持つ敷地に
浮かび、ところどころくり抜かれた光庭や軒裏にガラスや、ステンレスの光沢を持った材料を使って外壁の荒さと対比された表現の作品でしたが。
意図は良く分かるのですが、素材が生きていない様に私は思いました。(2014.3.30)
このビルの隣にあった作者は不明ですが薄い三角のビルで繊細な線が複雑に交差したファサードでとても興味深い建物がありました。
フォーラムビル向えのビル(作者不明) どの様な構造で建っているのかも不明
作者をご存知の方は教えてください。(2014.3.31)
海岸近くの地域にはアメリカの建築家フランク・オ・ゲーリーの魚のオブジェがあります。
魚のオブジェ 何がいいのか?(2014.4.1)
この貼りぼて建築(オブジェ?)は彼の原点でデザインソースの魚もまた原点になるそうです、後で紹介しますビルバオのグッケンハイム美術館に
繋がりますので覚えておいてください。
またこの近くに、ポルトガルの建築家アルヴァロ・シザの気象センターがありました。
アルヴァロ・シザらしくきっちりと納まった秀作でした。 アルヴァロ・シザ (1933 ‐ )(2014.4.2)
バルセロナ最後は旧市街の真ん中に突然現れるアメリカ建築 リチャード・マイヤーの
バルセロナ現代美術館です。
白くてすっきりとしたリチャード・マイヤーらしい建物です。
前面のスロープの内側に吹き抜けのロビー空間 リチャード・マイヤー (1934- )
30代の私でしたらとても良い評価をしたでしょうが、今ではこれが何故バルセロナに必要なのか?疑問符が付きます。(2014.4.3)
グラナダ
グラナダはスペインの南西の地域、アンダルシア州にあります。移動はバルセロナから格安航空
Vuelingを使いました。(約1時間半)
ヨーロッパの移動は格安航空が多くあります、
Skyscannerwを使うと予約でき便利です。(2014.4.4)
今回はアルハンブラ宮殿を見るためだけで行きましたので、バルセロナから日帰りでしたが、グラナダの街は暖かい地域で白い壁とスペイン瓦の
コントラストが似合う、まさにスペイン村に相応しい雰囲気の街で数日のんびりと滞在したいと思った街並みでした。
白壁とスペイン瓦、グラナダの街並み(2014.4.5)
グラナダの街はとても日差しが強いので道路の上にも日よけが!(2014.4.6)
アルハンブラ宮殿は入場券を買うのに一時間以上並びますので前もってチケットを予約しておくことをお勧めします。
アルハンブラ宮殿チケット予約 (予約したクレジットカードを機械に入れるとチケットが発行されますのでクレジットカードをお忘れなく)
アルハンブラはアラビア語で「赤い城塞」と言う意味だそうです。小高い丘の上にレンガで積み上げられた城塞が白壁の街並みから浮かび上がっていたのでしょう。
アルハンブラ宮殿(2014.4.7)
アルハンブラ宮殿にはイスラム王朝の時代の建物とキリスト教徒によるスペイン王国の時代の建物とがあり、その歴史を垣間見れる。
イスラム王朝の時代はグラナダを首都とした、ナルス朝(1238〜1492)の時代に繁栄しイベリア半島最後のイスラム王朝でした。
ナルス朝時代の建物から紹介します。
アラベスクのタイルや透かし彫りの欄間と窓廻りがイスラム文化らしい、メスアール宮の祈祷室
祈祷室(2014.4.8)
中庭の池の反射がとても絵になる、コマレス宮、アラヤネスの中庭
アラヤネスの中庭(2014.4.9)
有名なコマレス宮、ライオンの中庭
細い大理石の柱が軽快に並ぶ回廊の中庭(2014.4.10)
ライオンの噴水が中央にあるのでライオンの中庭と呼ばれている
ライオンと言うよりコマイヌの様でかわいらしい、噴水が出ていたらもっと良かったのだが!
噴水と浅く掘られた溝に水が流れていたらこの風景は一変している事でしょう、この中庭は正に水をテーマに創られた庭です。(2014.4.11)
夏の別荘として造られたのが宮殿と谷を挟んだ丘に造られたヘネラリーフェです。
中庭の噴水はインドのタジマハールに共通する所があります。
ヘネラリーフェの中庭
こうやって紹介してくると、どうもアルハンブラは中庭に特徴があったのだと納得しました。(2014.4.12)
1492年にグラナダがカトリックのレコンキスタ(再征服運動)によるスペイン王国に陥落し、カルロス5世はモスクを教会に改装し、
カルロス5世宮を建設する。(敷地の中央にあり全体の1/3程ある大きな建物)
外から見ると四角いどっしりとしたカルロス5世宮(2014.4.13)
中に入ると、丸い中庭があって軽快さと中庭を囲む部屋の統一感がある空間。
キリスト教の時代になっても、アルハンブラは中庭がテーマでした。(2014.4.14)
モスクを改装した教会(2014.4.15)
アルハンブラ宮殿の中に修道院を改装したホテル、
パラドール・デ・グラナダがありました、少し高価ですが、とても落ち着いた環境でお薦めのホテルです。
ホテル、パラドール・デ・グラナダの中庭 通風用のイスラム模様・すだれ窓と、その穴を塞ぐ穴模様の凸窓(2014.4.16)
グラナダの街は中世のスペイン覇権時代を思い出させるような街並みで、スケールが人に馴染む感じがしました。
街中には広場と教会があってこの構成はベネチアで見たカンポを思い出す和んだ広場でした。
グラナダ 街中の広場(2014.4.17)
広場に面したお店に、航海時代を彷彿とさせるスパイスショップがありました。
スパイスショップ (かごにはスパイスの実がそのままで売られていた)(2014.4.18)
グラナダの空港は小さな空港で鉄道の駅の様に改札を出ると飛行機まで歩いて行ってタラップで飛行機に乗ります。
大学時代に行った、ネパールのカトマンズ空港もこんな感じでのんびりしていました。
グラナダ空港(2014.4.19)
ビルバオ
ビルバオはスペインの北部バスク州ビスカヤ県の県都でビスケー湾に面した港湾都市でかっては鉄鋼・造船の街として発展したが、重工業の衰退で
街は錆びれていたが、ノーマン・フォスターの地下鉄を皮切りに、フランク・O・ゲーリーのグッケンハイム美術館は世界中から観光客を呼ぶ、
アートによる都市再生は建築の力を代表する例としてよく取り上げられるようになった。(2014.4.20)
バスク人はピレネー山脈をはさんでフランスの南部とスペインの北部に住んでいる独特の文化を持っていると紹介されている。
この町から20キロ北に行くとピカソの絵で有名な、ゲルニカがある。ゲルニカは1937年スペイン内戦中にナチスドイツが行った史上初めての無差別
都市爆撃でピカソはその記憶を残すためにこの有名な絵を残した。
都市への無差別爆撃はその後一般的となり、東京大空襲、広島、長崎への原爆、イラク空爆へと、
そして最近では無人飛行機での空爆へと発展しようとしている。
攻撃する方の人間と、攻撃される方の人間の価値は同等のはずだが・・・・・・。
ピカソ ゲルニカ(2014.4.21)
ビルバオにはバルセロナから格安航空
Vuelingで1時間10分ほどで行く事が出来る。
ビルバオ空港はスペインの建築家サンティアゴ・カラトラバの設計で今回見た最近の建築家の作品で一番感激した作品であった。
サンティアゴ・カラトラバ ビルバオ空港 (2014.4.22)
エントランス側からの外観 (2014.4.23)
エントランスホール (2014.4.24)
細部もきれいなディテールで納まっている。(2014.4.25)
サンティアゴ・カラトラバ (1951- )
サンティアゴ・カラトラバは土木の出身で航空学も学んでいる異色の建築家ですが、スペイン出身のガウディー、トロハ、キャンデラに共通する
構造感覚を持ったスペインらしい建築家です。
ガウディーのデザインソースは植物と爬虫類でしたが、サンティアゴ・カラトラバのデザインソースは(2014.4.26)
ダチョウの顔の様な管制塔
「鳥でした。」 (2014.4.27)
もう一つビルバオにあるカラトラバの作品
カンポ・ボランティン歩道橋 床はガラス張りでしたが、ゴムシートが後から敷かれていた。
スチールパイプ一本で吊られている、とても単純できれいな橋です。 (2014.4.28)
ビルバオには世界遺産になっている橋があります。車の載る車道と左右の歩道20m位のゴンドラが、ワイヤーで吊られて移動します。
1893年に開通しましたので120年も現役で動いています。
世界遺産 ビスカヤ橋 (地下鉄 1号線 Areeta、またはRENFE C-1 Portugalete) (2014.4.29)
ゴンドラがワイヤーで吊られて移動する (2014.4.30)
ビスカヤ橋にはイギリスの建築家ノーマン・フォスターが設計に関与した地下鉄に乗って行けます。
ノーマン・フォスター (1935 - )
地下鉄出入り口 円筒型のデザインのもあります。 ドーム天井で中二階から各ホームへ降りていく (2014.5.1)
さて、世界中にビルバオの名前を広めた、
グッケンハイム美術館です。(トラム、Museo Guggenheim)
前にも魚のオブジェで出てきました、アメリカの建築家 フランク・O・ゲーリーの設計です。
フランク・O・ゲーリー
3匹の魚がデザインモチーフと言われています。後ろのV字(鉄骨が見えるもの)がしっぽ (2014.5.1)
しっぽ部分の詳細、正に張りぼて(向こうから見るとしっぽにみえる)
外形線は曲線ばかりで構成されているが、骨組みは直線の構造材。(この傾向は本館も同じ)(2014.5.2)
ガウディーの曲線と違って意味のない曲線の連続空間、 見慣れない空間なので写真写りは良いが、私は虚しさを感じた!(2014.5.3)
細部を見ていくと全然納まっていない部分が目についてしょうがない。 カラトラバを見た後で、これでは?
後ずけで補強した? これがホールのメイン階段? 現場小屋の階段では? (2014.5.4)
まあ、フランク・O・ゲーリーは張りぼてからスタートしたのでこの建物もその延長と観れば納得なのですが・・・・・・?
昨年亡くなられた写真家二川幸夫が何故これを評価してフランク・O・ゲーリーをたてるのか私には良く分かりません。
これがアメリカらしい20世紀の文化を表したものだから評価したのであれば、20世紀は寂しい時代になる! (2014.5.5)
スペイン最後になりますのでやはりガウディーでしめます、 ガウディーと日本の建築家との繋がりについて少し書き添えたいと思います。
サクラダファミリア 祭壇 (2014.5.6)
ガウディーを日本に最初に紹介したのが碌山美術館を設計した今井兼次先生で私の恩師志水正弘先生の恩師にあたる。
碌山美術館 今井兼次(1895〜1987)(2014.5.7)
今井兼次は母校早稲田で教職をされながら、ガウディーに強く影響を受けて創られたのが、長崎にある日本二十六聖人記念館です。
日本二十六聖人記念館(2014.5.8)
もう30年以上も前になりますが、ステンドグラスの光でブルーに染まった空間が今も思い出せます。
また、スエーデンのストックホルム市庁舎でも書きましたが、今井兼次と、村野藤吾は非常に近しく、
村野藤吾もガウディーから多くの影響を受けていると思われます。
村野藤吾(1891〜1984)
そんな目で村野先生の日生劇場を見直してもらえると、面白いと思います。
日生劇場(2014.5.9)
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