建築 雑コラム 22
Architecture The s Column
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健康な住宅 - 「湿度」・「化学物質」について
雑コラム19で 「温度」について書きましたが、アトピー環境研究会名古屋での活動をきっかけに、勉強した事は他にも多くあります。
今回は「湿度」と「化学物質」について、まとめてみようと思います。(2014.10.18)
日本の気候で湿度が高い事、雨が多い事は有名ですが、現在よく供給されている住宅で湿度に対し注意を払われた住宅はあまり見受けません。
日本の夏は、30℃を超える温度、そして70%を超える湿度 「とても蒸し暑い」 (2014.10.19)
あなたの部屋をよく見てください。(特にアパートや、マンションに住まわれている方)
一般的なアパートの部屋
壁、天井の材料は何でしょうか? そうですビニールクロスと言われた方が多いでしょう。(90%は居ると思います) (2014.10.20)
では床の材料は? フローリング? ビニール床材? たたみ?
フローリングは木ですが、表面は湿気を給放湿しない塗装がされたものが多くあります。
現在のたたみも芯材がスタイロフォームで殆ど給放湿はしません。(古来からの畳は畳床が藁で給放湿性能の高い物でした)
そうですあなたの部屋はビニール袋の中にある様なもので、その中で炊飯調理したり洗面脱衣から出された湿気は部屋に充満し、
温度の低い所に結露します。 (2014.10.21)
結露した所は濡れますから、埃も付きやすくなります、最悪の場合カビが生えて、そのカビを食するダニも増える事となります。
十年ほど使っている部屋の天井や壁をよく見ると少し白い筋が45センチほどの間隔に付いていませんか?
(壁の中に断熱材が入っている時は逆の場合もあります)
それは下地の木の位置です、下地に木がある部分は保温効果があってその他の部分より温度が下がりにくく結露しにくいので埃も付きにくい
温度の変化が結露となって壁の歴史を刻んでいます。 (2014.10.22)
日本の夏の湿度は高いのですが、反対に冬の湿度は低くなります。 夏は蒸し暑く、冬は底冷えがする、とよく言われます。
湿度60%を超えるとカビの繁殖しやすい状態になります。またそれに伴ってダニも増えます。
タンスの裏にできたカビ ダニ (2014.10.23)
逆に言えば、
カビ、ダニの少ない環境にするには湿度60%以下に保つことです。
湿度40%を下回ると、インフルエンザの菌が繁殖しやすくなります。冬になると風邪をひく人が多くなるのは冬湿度が下がって菌が繁殖するからです。
ですから、
部屋の湿度を40%〜60%に維持できる部屋が、住いとして最適な環境となります。(2014.10.24)
ビニール袋状態の部屋では、夏はエアコンで、冬は加湿器を使ってこの環境を維持されている方が多いと思いますが、
よほど気を付けて管理していないといけません。
温湿度計を部屋に付け良く見て管理されることをお勧めします。 (2014.10.25)
しかし、冬加湿器で加湿した部屋の暖房を切った時、室温は下がり湿度は飽和状態となって温度の低い所に膨大な結露を発生させます。
冬の朝、サッシの窓ガラスに流れ落ちるほどの水滴を見る事があります、正にこの状態です。
この状態は部屋のみえない隅で温度の低い所にも起こっています。 82014.10.26)
例えば北側の壁に置かれたタンスの裏などがその状態で上記の写真の様なカビは一般的によく起こっています。
カビからは無数の胞子が部屋中に放出されその中で生活する事となり良い環境とは言えません。
また夏ではエアコン内のカビや、壁体内で結露をお越し壁の中がカビる事も良くあります。 (2014.10.27)
本来 昔からの日本の民家は 湿気る事を最も嫌ってきました。
そのため、床下に風が入る様になっています。
床下に風が入る様になっている昔の民家 (2014.10.28)
起源となっている高床式倉庫(登呂遺跡)
また、小屋裏も風が入る様になっています。 (2014.10.29)
柱も真壁と言って、空気と面する様になって居て乾燥できるように工夫されていました。
柱が外に出ている真壁の民家
家が乾燥される替り、外気に接するので冬はとても寒い環境でした。
その代り建物は100年単位で維持されます。 (2014.10.30)
昔からあった民家の湿気らない家は
屋根の水を早く流し、建物から放して落とす。(屋根勾配が強く、庇を長く)
外壁を濡らさないようにする。(庇を長く)
足元の水は建物から外々へと流れる様にする。(敷地地盤は建物の中が一番高く基礎、縁側、、庭へと順に低くする)
乾いた敷地の所に家を建てる。(乾燥して、地盤の良い敷地、これが第一条件だった様に思う)(2014.10.31)
床下、小屋裏に風が入り乾くようにする。
湿気のあるものを部屋内に入れない。(風呂、便所、流しは以前は外や別棟、下屋にあった)
などの特徴がありました。 (2014.11.1)
20世紀後半省エネルギーが問われて断熱を重視する家の造り方に変わって来ました。
断熱材で温度の違いが出来た部分には結露が発生しやすくなります。
そこで、壁の中一面に入れられた断熱材が結露し、ジュクジュクの濡れたふとん状態で柱を腐らせる問題が発生する様になりました。
乾燥した空気のアメリカの建築方法ツーバーフォー工法も壁の中の空気が動かないので、
この湿気った気候の日本では、壁体内結露の問題が発生します。
壁体内結露で柱が腐った住宅は10年持ちません。 (2014.11.2)
現在国交省や住宅金融公庫などがこの壁体内結露に対する対策として提唱する方法は、
部屋の内側から防湿シートを床、壁、天井に隙間なく敷き詰めて壁体内に湿気が入らないようにする工法です。(まさにビニール袋状態)
防湿シート(ビニールシート)を貼った下地壁(これから左の様にプラスターボードをビス止めしていく) (2014.11.3)
壁体内の柱を守るために、人間はビニール袋の中で生活しなさいと言っている様ですが、
この写真の状態から壁材のプラスターボードはビスで打たれます。
当然ビスで防湿シートは穴だらけになっています。湿気が壁体内に入らないのでしょうか?
また、防湿シートに接する仕上げ材は湿気ってカビ易いのでは?(壁体内で結露するかわりに、仕上げ材の裏で結露している)
壁体内だけ乾燥したアメリカの気候に、防湿シートのみで出来るのでしょうか?あまりにも発想が短絡過ぎるのではないでしょうか?
私は国交省や、住宅金融公庫が薦めるこの工法には大きく疑問を持ちます。(2014.11.4)
サスティナブルな社会を目指す21世紀の住宅は断熱は必然です。より高性能な断熱になっていくと思われます。
そこで日本の気候にあった21世紀の木造を考えるために、断熱と結露、構造、輻射熱材、防水防湿材について考え直す時期に来ていると思います。
私が現在まで試行錯誤して考えてきた基本をご紹介します。
1. 躯体(木の柱、梁、土台など)は動く空気と接する様にする。 (結露が起きにくくなる、古来からの日本の木造と同じ様に)
2. 建物全体の温度差を出来るだけ少なくする。 (温度差の大きな部分に結露が発生する)
(外断熱にて結露の起こる部分を躯体外にもっていく)
3. 地面からの水蒸気を建物内に入れない。 (これを防ぐために日本の古い建物は高床式になっていた)(防湿シートの活用)
4. ビニールの様に湿気を止めるのではなく浸透性のある材料を使い、湿気を外に逃がす方法を取る。(2014.11.5)
5. 浴室、台所、洗面、便所など家の中で発生する湿気は素早く外に排気する。 (家相の基本は風上にこれらを持ってこない事だった)
6. 給放湿できる仕上げ材料で室内の湿度を40%〜60%に自然に維持できるようにする。
7. 輻射熱材は性能が落ちても透湿性のあるものを使う。
8. 断熱材は吸水性の少ない物を選択する。(グラスウールやロックウールは避ける)
9. 外断熱にする場合の断熱材は不燃性にも注意する。
10.耐力合板類は透湿性のあるものを選択する。(2014.11.6)
以上の様な事を考えながらそれぞれの現場にあった方法を探しています。
(多くの場合は予算によって、選択を余儀なくされることが多いのですが)
詳細を一つずつご説明します。(2014.11.7)
1. 躯体(木の柱、梁、土台など)は動く空気と接する様にする。 (結露が起きにくくなる、古来からの日本の木造と同じ様に)
金融公庫の床壁の断熱材と防湿気密フィルムの納まり
一般的には上部詳細の様に壁の中、床根太の中いっぱいに断熱材を入れて部屋内側に防湿気密フィルムにて壁体内に湿気が行かない様に
考えられた納まりが推薦されています。(2014.11.8)
しかし前にも書きましたが、防湿気密フィルムは仕上げ材を止めるビスや釘の穴が開きますので湿気は壁体内に入ります。
結露は防湿気密フィルムの部屋内側で起きますので仕上げ材は濡れやすく、カビ易い結果となります。
また、ビニール袋の中に部屋がある状態になりますので、温度、湿度、新鮮空気供給、換気を計画的に行わないと結露が起き、
カビが生え、ダニがわきます。また換気が不十分ですと建材や生活物質から発生される化学物質のために、健康を害し最悪の場合
化学物質過敏症になる危険性もあります。(2014.11.9)
省エネで断熱材を使う事になり、壁体内に断熱材を充填した結果壁体内の空気が動かなくなり、壁体内結露が起こりました、
壁体内結露を起こさないために防湿気密フィルムを部屋内側にもうけ、理論上は壁体内に湿気が流れる事を防いだことになっています。
その結果ビニール袋の中で生活する事になり、部屋内に結露が起こり、化学物質が充満する結果になりました。
化学物質過敏症、ホルムアルデヒドの問題が世間で騒がれ、対策として24時間換気の規制が出来ました。
ただ、24時間換気の意味と必要性をどれほどの建築士や、クライアントが理解しているのでしょうか?(多くは使われていな状態が多い)
何かあれば自己責任、対策は法規でしてあるので、国交省の役人には責任がない!と言いたいのでしょう。全て付け刃で対策してきた付がきています。(2014.11.10)
結露は温度差がある部分で、空気の動きが少ない部分に発生します。
壁体内でも空気が動いていれば結露がしにくくなります。
発展途上ですが、現在私が使っています納まりをご紹介します。
基礎、床、外壁廻り納まり図(2014.11.11)
床下から壁体内、壁体内から小屋裏へと空気が循環して動く納まりになっています。
土台、柱、梁、小屋材全ての材料が動く空気に触れる様に考えています。(2014.11.12)
2. 建物全体の温度差を出来るだけ少なくする。 (温度差の大きな部分に結露が発生する)
(外断熱にて結露の起こる部分を躯体外にもっていく)
温度差の大きな所に結露が生じる、建物全体が温度差のない状態ならば建物内での結露はふせげる。
これを可能にする方法が外断熱になる。
断熱には外断熱と、内断熱の方法があって日本では今までほとんどの家では内断熱が採用されてきた。
内断熱の冷暖房は基本的には各部屋単位で行いそのために各部屋間の温度差は大きかった。
また躯体の中で断熱するので躯体は外気側となって外気に影響され、断熱に寄る温度差は、躯体部分(壁体内)で起こり結露もその部分で起こり易い。
外断熱は躯体の外で断熱する方法で躯体内は室内温度に影響され均質な温度環境を維持できる。また、断熱材に寄る温度差は躯体外で起こり
結露しやすい部分も躯体外となる。(2014.11.13)
外断熱(外張断熱工法) と 内断熱(充填断熱工法) (2014.11.14)
3. 地面からの水蒸気を建物内に入れない。 (これを防ぐために日本の古い建物は高床式になっていた)(防湿シートの活用)
地面からの湿気はかなり多い。
日本人の住まいの最初は登呂遺跡の様な竪穴住居で乾燥した土地の地面を少し掘って造られていた。
その絶対条件としてあったのが、乾燥した場所でした。
現在は防湿シートを使って地面からの湿気を建物内に入れる事を防ぐようになってきたがその歴史はまだ浅い。
公庫の仕様でも絶対条件ではないので防湿シートを使ってない建物も未だ多いと思われる。(2014.11.15)
防湿シートで覆われたべた基礎以前の現場
しかし、写真の様に防湿シートで覆った次の日に現場に行くとシートの裏面に溜まった水滴の多さに驚く事が多い、
シートが無ければこの水滴が全て建物内に発散される水蒸気と考えれる、たぶんコップ半分/uくらいの量はある。(2014.11.16)
竣工後床下を点検する事があるが土間コンクリートは完全に乾燥しているので地盤面からの湿気はこれで完全にシャットアウトできていると思われる。
よその現場で、防湿シートのされていないべた基礎の土間を見た事があるが、湿気って色が変わっていたので湿気は完全に止められていないのだろう。
4. ビニールの様に湿気を止めるのではなく浸透性のある材料を使い、湿気を外に逃がす方法を取る。
前出の金融公庫の床壁の断熱材と防湿気密フィルムの納まりの様に防湿気密フィルム(ビニール)にて躯体内に湿気が侵入するのを防ぐのではなく
透湿性の材料で屋外に湿気を逃がす方法。(2014.11.17)
5. 浴室、台所、洗面、便所など家の中で発生する湿気は素早く外に排気する。 (家相の基本は風上にこれらを持ってこない事だった)
室内で発生する湿気は素早く屋外に排出された方が良い。皆さんよく分かっているのですが、台所コンロを使う時はレンジフード使いますが、
電気炊飯器、食器乾燥機使う時は?意外と多いのです。排出される水蒸気はコップ二、三杯の料があるので気を付けて換気してほしい。
また、浴室の換気は換気扇を使って排気する事をお勧めする。特に北風が吹く冬浴室の窓を開けると浴室は冷え結露を起こし、湿気を持った風が
室内に流れ込み家全体に湿気を持ち込むことになる。
(冬は浴室の窓を開けてはいけない)
(私は、浴室は湿気った壁に外気の汚れが付きやすいのでむしろ浴室の窓はFIXでも良いと考えている) (2014.11.18)
だから浴室の換気は換気扇で浴室の湿った空気を屋外に出し、換気扇のパイプ100φと同じ面積で室内の乾いた暖かい空気で吸気する。
すなわち、浴室の戸を2p程開け、脱衣室の換気扇もつける時は脱衣室の出入り口の戸を4p開けると湿気が居室に流れ込まない。(2014.11.19)
暖かい空気は多くの水蒸気を含む能力がありますが、寒い空気は少ない水蒸気しか含めない能力になります。
そうです、暖かい空気は良く水を吸う雑巾、寒い空気は殆ど水を吸わない雑巾の様なものです。それを表したのが空気線図です。
空気線図 (2014.11.20)
下段の数字が温度です、浴室の温度28度の空気は24gの水蒸気を吸収できる雑巾です。
窓を開けて4℃の冬の外気を入れ室温が4℃になった空気は5gの水蒸気しか吸収できない雑巾になってしまいます。
1/4以下の吸収能力の雑巾になってしまいます。
私が、「冬は浴室の窓を開けてはいけない」と言った事を少しは理解できて頂けるでしょうか? (2014.11.21)
冬の暖房時の加湿器、ストーブの上に置かれたやかんからの蒸気、乾燥した空気の加湿には良いのですが、暖房を切った時から室内温度が下がると
結露が起こります。暖房時加湿器を使う時は、暖房を切った時は除湿乾燥機を使う必要が出てきます。
同じく空気曲線で説明しますと、室温24℃湿度60%の空気は11.4gの水蒸気を持っています。暖房を切って冬室温が8℃まで下がった時の空気は
7gしか持てませんので11.4-7=4.4gの水蒸気が結露して室内の何処か寒い部分で水になります。
この4.4gを除湿乾燥機で吸収する必要があるのです。 (2014.11.22)
6. 給放湿できる仕上げ材料で室内の湿度を40%〜60%に自然に維持できるようにする。
加湿器や、除湿乾燥機を使わなくて良い方法はないのか?と考えます。前に書きました壁天井がビニールクロス、床がビニールクッションフロアーの様な
ビニール袋の中の様な部屋では無理です、機械的にコントロールする事になります。
しかし仕上げ材をビニールの様な給放湿しない材料から、昔から日本建築で使っている様な土や、木、紙の様な給放湿する材料に換える事で自然に
コントロールできるようになります。(2014.11.23)
少しそれぞれの材料の特徴を知る必要があります。
土には、漆喰、ジュラク、プラスターなどがありますが、既製品の塗壁で合成樹脂の入っている物は給放湿能力が極端に落ちます。
最近流行の珪藻土も珪藻土自信は固まる能力を持ちませんので合成樹脂で固めるものが多くあります、これらは給放湿能力が落ちてむしろ
漆喰や、プラスターの方が能力が高い時もありますので注意して選択してください。
私は珪藻土をプラスターに入れて固める「ケンコート」(吉野石膏)を使っています。
珪藻土は短時間で給放湿しますが、給放湿量はそれほど多くはありません。
木、木はゆっくり水分を吸ったり、吐いたりする性質があり、給放湿量は珪藻土よりはるかに多くの水蒸気を給放出できますが短時間に作用できず
長時間の時間が掛かります。(2014.11.24)
そうです、室内の湿度を自然にうまくコントロールするには、短時間に作用する珪藻土の仕上げと長時間に作用する木の仕上げをうまくバランスよく
取り扱う事がポイントになります。わたしは、自分の設計した部屋の温湿度を計測してバランスを感覚的に身に着けました。
木を扱う時、給放湿できなくなるような塗膜を作る塗装は避ける必要があります。(2014.11.25)
7. 輻射熱材は性能が落ちても透湿性のあるものを使う。
最近、断熱材の他に輻射熱の侵入を反射するアルミ箔を使う事が出てきました。
屋根面及び西日を防ぐ西壁面にはとても有効なのですが、アルミ箔は湿気を通しませんので使用する場所を間違えますと壁体内結露を起こす可能性
が出てきます。輻射熱対策と壁体内結露を比較すると壁体内結露の危険性の方が重要です。
私はアルミ箔より反射性能は80%位に落ちますが、透湿性のあるタイベックシルバーを使用します。(2014.11.26)
9. 外断熱にする場合の断熱材は不燃性にも注意する。
外断熱は温湿度に関しては最良な方法だと思いますが、一つ欠点があります。
それは外壁の耐火性能です。 断熱材は可燃性の物が多くそれが屋外の延焼に近い部分にある事になります。
また通気工法ですぐ隣に煙突も付けた様な状態で納まっています。一つ間違えればとても危険です。(2014.11.27)
数年前に中国でレム・コールハスが設計した中国中央電視台本部ビルの隣の文化センターが火災になりました。
中国電視台本部ビル 隣のやはりレム・コールハス設計の文化センターの火災
正月の祝いの花火からビル全棟が燃える大火災となりました、幸い建設途中で人的被害になっていないのが幸いでしたが、
火災の勢いの凄さには驚きです。(2014.11.28)
この火災は外断熱で発火燃焼性の強いウレタン断熱の可能性高いと思います。
ウレタン発泡剤は断熱性能の高い材料ですがいったん火が着くと延焼性が高い危険な材料となります。
外壁の得に通気工法で着火しやすい部分に外断熱の断熱材はありますので不燃性の高い材料で選択したいものです。(2014.11.29)
10.耐力合板類は透湿性のあるものを選択する。
木造の耐力壁として合板が使われることが多くなっています。構造的には丈夫いのですが、合板は湿気に弱く外部に使われた合板は数年で剥離
する事もあります。
合板は接着剤で薄くはぎ取られた木材を貼り合わせて作られたもので接着剤が耐力、耐用年数と言えます。(2014.11.30)
ユリア樹脂系接着剤合板は特に外部には弱く数年で剥離する事もありますので耐力壁には不適です。
最近多いのがフェノール系接着剤合板でユリア樹脂系よりは耐用年数が長いと言われますが数十年単位で100年単位の耐用年数ではないのです。
100年持たせようと考えた住宅には合板を使った耐力壁は不向きとなります。(2014.12.1)
(接着剤は何時か耐用年数が切れます、じゃあ集成材の柱、や梁の住宅は?、何年持つの?、100年?、それは無理でしょう!)
また合板の透湿性は非常に悪く湿気を通しにくい材料ですので壁体内結露の危険性を考えると使いたくない材料と言えます。(2014.12.2)
そんな事もあって私は木造の耐力壁の場合合板ではなくパーティクルでシラス材を挟んだダイライト(ダイケン)を使う事が多くなっています。
ダイライトは透湿性も耐火性もあって、合板よりも防腐性が高くシロアリにも強いとカタログには謳われていますが、まだ出来て20年程しか経っていま
せんので本当の耐用年数は出ていません。
湿度に関する話はここでひとまず終わります。(2014.12.3)
ここからは今ではほとんど話題になる事の少なくなった、
化学物質について話します。
1995年名古屋のある医師から家を新築したり、改装した後にアトピーになったり体調を悪くする人があるので因果関係を調べたいとの投稿から
アトピー環境研究会名古屋が始まった13年200件を超える調査からは、アトピーと建築との直接的な関係はなく、むしろ掃除洗濯などの生活環境、
医学的な問題がそれ以上の原因であると結論づけれた。(2014.12.4)
それとは対照的に化学物質過敏症になる原因が住宅の新築や気密性に関係するのではと調査するにしたがってはっきりしてきた。
前にも書きましたが、省エネに端を発した断熱化、気密化は20世紀後半の世界中の住宅を大きく変える事になった。
しかし多くの建材、多くの生活物質には多くの化学物質が含まれそれが気密化された住宅内で発散され、人体に問題を起こす事となった。
(2014.12.5)
住いに潜む毒性物質(2014.12.6)
日本でのきっかけはホルムアルデヒドの問題で、当初大阪の歯科医師から問題提起されかけた頃にアトピー環境研究会名古屋も活動を始めた。
しかし世界ではすでに高断熱、高気密先進国のドイツ、スエーデンでは化学物質に関する問題が把握されつつあり、対策も取られ始めた時期でした。
その当時日本の合板の接着剤はホルムアルデヒド系の接着剤で私も新築の屋根裏の検査をする時目がチカチカした経験があります。(2014.12.7)
ホルムアルデヒド系の接着剤は合板だけではなく壁天井のクロスや、床材の接着剤にも使われていました。
また、カーテンなどの繊維からも出ていますし、本からも出ますので書斎などはかなり高濃度になっています。
自然素材を使っていれば大丈夫と言われる建築家もいますが、杉材からもホルムアルデヒドは発散されていますので化学物質過敏症になった患者さん
の家では気を付けて使う必要も出てきます。(2014.12.8)
2003年(平成15年)にシックハウス対策にかかわる法律が施行されホルムアルデヒドに関してはその含有量でランクが設けられ、
ランクごとの使用範囲が決められました。最高ランクは0.005mg/uh以下でF☆☆☆☆で表示され無制限に使用できます。(2014.12.9)
施行後日本の建材は殆どがホルムアルデヒド系接着剤からフェノール系接着剤に変わりF☆☆☆☆以外の材料は殆ど見付けれなくなりました。
しかし、海外からの合板(ホームセンターに出ている安い合板)や、通販で売られている家具などは海外の合板を使う事が多くホルムアルデヒド臭の
強い物がありますので気を付ける必要があります。(2014.12.10)
F☆☆☆☆の合板(2014.12.11)
ホルムアルデヒドに関してはこの法律である程度の問題は解決されたと私は思います。
アトピー環境研究会名古屋での調査で化学物質での影響のもう一つの傾向があります。それは
防蟻剤(シロアリ駆除剤)です。
シロアリ駆除剤がきっかけで化学物質過敏症になって行かれた方が少なくはないと私は推測します。(2014.12.12)
また家を建てて体調を崩される方の多くはシロアリ駆除剤を最初に疑ってみる必要があると思えるほど私は危険に思います。
私の創る住宅はシロアリ駆除剤は一切使いません、その代りシロアリの嫌う木を使い、シロアリが侵入しにくい対策を取っています。
その当時のシロアリ駆除剤は主にクロルピリホス、ホキシム、フェニトロチオンなどがあります、すべて有機リン系で農薬と同じです。(2014.12.13)
新築でシロアリ駆除された住宅の室内のシロアリ駆除剤の濃度は田に散布された農薬の散布後2日目の濃度が10年間持続するそうです。
聞いただけでも体調を崩しそうです。知らないのが幸いか?そんな環境で生活されている現状を多くの施主は知るべきだと思います。(2014.12.14)
さすがに毒性の強いクロルピリホスは2003年(平成15年)にシックハウス対策にかかわる法律で使用禁止になりましたが、
その他の有機リン系の農薬と成分の同じ駆除剤は現在も使われています。
防蟻剤(シロアリ駆除剤)には気を付けて下さい。(2014.12.15)
2003年(平成15年)にシックハウス対策にかかわる法律で室内濃度の対象となった物質が10物質あります。
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、パラクロロベンゼン、テトラデカン、フタル酸-n-ブチル、
フタル酸ジーエチルヘキシル です。 まだたくさん対象とする物質がありましたが、とりあえず10物質が規制されました、その後順次対象物質を増やす
予定でしたが、姉歯事件で全てが止まったままになっています。(2014.12.16)
現在私たちが生活する家の中には建材以外にも多くの生活物質から本当に多くの化学物質が発散されています、まだ未解明の危険物質も多くあると
思っていいと思います。(2014.12.17)
化学物質過敏症になられた方とも多く会う機会がありましたが、自分の家に住めなくホテル住まいをされている方や、
医療機関から出る事が出来ない方など、かなり大変な状況になる事を知りました。
また人それぞれによって状況が違うので私にはたぶん対応できないとも思いました。(2014.12.18)
自然素材を使っているだけであたかも健康住宅のプロの様な顔をした建築家や、健康を歌って営業を伸ばそうとするハウジングメーカーに
憎悪を感じた時期でした。(2014.12.19)
化学物質過敏症はなぜなるのかもはっきり決まっていませんが、人それぞれの許容量があって、それを超えた化学物質が体内に充満した時から
症状が出始めると説明がされることが多いようです。ですから家族が同じ環境にあってもただ一人化学物質過敏症になる事も多くありますが、
患者さんが悪かったり特殊なわけではなく他の方より許容量が少し少なかっただけの事です。(2014.12.20)
室内環境で化学物質過敏症のような症状がある時は、素早くその環境から逃げてください。(これが唯一の解決法です)
アトピー環境研究会名古屋の活動を通して気が付いた事を後二つ書きます。(2014.12.21)
最初は高気密住宅での住まい方です。高気密住宅は文字通り気密化された住宅なので、以前の様な隙間だらけで自然に換気される住宅と違って
多くの事に気を付けながら生活しないと健康を害する事になります。(2014.12.22)
高気密住宅では生活物質、建材から出る化学物質が溜まり易く高濃度になり易いので機械的に換気が必要です。
まずは新鮮空気をどこから入れてどこに排気するかです。計画的に尚換気扇など機械を使ってする事になります。(2014.12.23)
最近法律で24時間換気の義務づけがされましたが正確に使われている家は少ないと思います、また多くの過程ではスイッチが切られています。
大変危険です。スイッチを入れてください! また定期的に換気扇や、熱交換換気扇のフィルターを掃除して下さい。(2014.12.24)
気調換気扇
高気密住宅の絶対条件です。(2014.12.25)
そして殺虫剤、蚊取り線香を使ってはいけません、毒ガス室になってしまいます。
(2014.12.26)
高気密住宅を竣工して施主に手渡す時は必ず設計事務所または施工業者はこれを伝えなければいけません。
高気密住宅はその住宅にあった以前とは違った生活をしないと体を害する危険性があります。(2014.12.27)
設計の最初にこのことを確かめて、それが出来ない施主には高気密住宅の設計をしてはいけないと思います。
私は高気密住宅を希望され、生活様式をそれに合わせられる施主以外は高気密住宅は作りません、
そして、換気回数0.5回/時以下の高気密住宅ではなく、換気回数1回/時の低気密住宅を目指しています。(2014.12.28)
二つ目は、寝室にクローゼットが造り付けになっていたり、洋服箪笥があったりしませんか?
各部屋の空気環境を計測するといつも寝室である物質が飛びぬけて高濃度になっています。
それは防虫剤です。そう洋服箪笥につるしてある防虫剤!
無臭でも危ないピレスロイド系防虫剤 (2014.12.29)
寝室は長い時間その環境で休息を取りますので空気環境が悪いと影響を受けやすいのです。
防虫剤の成分は、樟脳、ナフタリン、パラジクロロベンゼン、ピレスロイド系などありますがいずれも化学物質過敏症や、発がん性があります。
(2014.12.30)
寝室に防虫剤は大変危険です。寝室に洋服箪笥は置かないでください。
クローゼットを造り付ける場合はクローゼット内に換気扇を常時付けて下さい。
クローゼットはできれば別室のウォークインクローゼットで換気扇を常時付けるのがベストです。
(2014.12.31)
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