建築 雑コラム 9
Architecture The s Column
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広葉樹で私の良く使う木を紹介します。
ナラ・楢・オーク(なら)
床材をフローリングにする事が多くなって、ナラをよく使います。
ナラフローリング リボス塗装品 虎斑模様のナラフローリング 無塗装品(2012.9.10)
ヨーロッパではオークと呼ばれて親しまれている木ですが、日本では栗、ケヤキほど使われませんでした。
ヨーロッパでは床材や家具材、ウィスキーの樽などで良く使われた木で日本でも現在一番よく使われている床材です。(2012.9.11)
無塗装の時は色は比較的白っぽい感じです。また、虎斑(とらふ)といって虎の斑紋を連想させる模様が出る時もある。
国産のナラのフローリング材は少なく、ほとんど最近は中国産です。(2012.9.12)
15年ほど前に中国産のフローリングを初めて使った時は本実の加工が悪く、苦労しましたが、最近の加工は国内産と変わりません。
合板フローリング 無垢フローリング 本実加工 (2012.9.13)
フローリングと言っても最近は合板フローリングが良く使われます、左の写真の様に合板の上に1mm程度の本物の板(紙に近い)を貼ったものです。
張り上がると見た目は無垢と同じ様に見えますが、長年使っていると違いがでてきます。
無垢材は本物の持っている素材感がにじみ出てきます。(2012.9.14)
しかし無垢に比べて合板は収縮や歪が少ないので大工や施工業者は手戻りの仕事が少なくなりますので合板を薦めますが、
私の事務所は無垢ナラフローリング 厚み15mmで ドイツの自然塗料のリボス塗装品をよく使います。(2012.9.15)
たも・タモ(たも)
広葉樹の中では木目がはっきりしていて色は少し黄色みがかった白で柾目と、板目では表情が変わります。
タモ 柾目 タモ板目(2012.9.16)
私は窓枠、ドア枠、など柾目で使います。またドアなどにはタモ柾練り付け合板をよく使います。
何れも無塗装品で現場で自然塗料のオスモかリボスで塗装して色を合わせます。
タモ柾はとても品があって私のお気に入りの木です。(2012.9.17)
無垢タモフローリング 無塗装品(2012.9.18)
タモは北海道、樺太、中国、韓国で取れ北米ではアッシュと呼ばれています。
現在は中国産のタモ材がほとんどです。
現場でセンの材料も見ましたが、ほとんどタモと同じ様に見えましたがセンはまだ使った事はありません。
タモより少し白っぽいかもしれません。
セン柾目(2012.9.19)
栗・クリ (くり)
栗は湿気に強くまた強度もあるので古くから土台に良く使われてきました。またシロアリにも強い材料です。
栗の産地中部圏で言えば中津川や小布施などでは栗菓子のみでなく民家もすべて栗材なんてびっくりするのもあります。
ケヤキに比べると変形の少ない材料です。
たぶん200年、300年単位で持つ材料と思います。(2012.9.20)
栗板目(2012.9.21)
ケヤキに似て広葉樹の中でははっきりした木目でケヤキより色は薄く、栗鹿の子の色に近いと思います。
存在感のある材料で一度どこかで丸柱で使ってみたいと思っています。
家具や、内部造作の枠などにも使えます。(2012.9.22)
ケヤキ・欅(けやき)
ケヤキは堅く木目もはっきりしてきれいな材料ですから、床の間の床板や、玄関の上り框などに良く使われます。
生息地は関東以北で寒冷な地域になります。ケヤキはよく乾燥させないと変形する事が多く注意が必要です。(2012.9.23)
ケヤキ柾目
堅いので床材などに使われることが良くあります。(2012.9.24)
出身が新潟(新潟もケヤキの産地)のクライアントのトイレの床に60cmの広幅のケヤキ無垢材を使った事があります。とても豪華なお手洗いになりました。(2012.9.25)
私の自宅にあるテーブルはケヤキの幅80p、長さ210cm、厚み8pの無垢材で存在感のあるテーブルです。
色は黄褐色でナラ材より濃いめに色が出ます。
最近は無垢材として使われることは少なく床板(とこいた)にしても框材(かまちざい)にしても
練り付け材(ねりつけざい)(表面に1mm程度の本物の板を貼ったもの)がほとんどとなりました。(2012.9.26)
科・しな・シナ(しな)
しなは柔らかい木で練り付け合板で使いました。版画板として使われることもあるようです。
しな 柾目 (2012.9.27)
きめの細かい木目ですが、表面は意外に毛羽立っていて直接塗装するとムラにまります、サンドペーパーの細かい目の物で研磨してから塗装します。
オイルフィニッシュで仕上げた時はムラは目立ちませんが、色付きのペンキ仕上げなどは良く研磨しないとムラが出ます。(2012.9.28)
しな合板オイルフィニシュ 目透し張り
板目はメープル材の様な木目が出る事があって、それを見せようと木のお盆などで漆を塗って研磨する工程を何度も繰り返す工芸の様な仕上げに
したくて、安いしな合板をウレタン塗装、研磨を5回くらい繰り返したらものすごく高級な銘木材に変化しました。(2012.9.29)
ラワン (らわん)
私が建築の仕事に就いた1976年以降の高度成長時代 安価な材料の代名詞の様にラワンが使われた、中でもラワン合板はベニヤ板と言われ
コンクリート型枠、下地材などで大量消費された。(2012.9.30)
ラワン材
ラワンは東南アジアで取れる広葉樹で繊維が緻密で狂いが少ないのでよく使われるようになったのだと思いますが、日本のこの大量消費によって
東南アジアの森林がなくなり、自然環境崩壊の象徴のように言われ現在はラワン材はほとんど使われなくなった。(2012.10.1)
安いラワン合板をいかに使いこなすかはその当時の建築家の技量のような感じがしていた。
私はラワン合板目透し張りでオイルステイン、クリアラッカー仕上げを良くしました、しかも目地底には黒のテープ貼りをしていました。(2012.10.2)
ラワン合板目透し張り OS、CLの壁天井の廊下 目地底に黒テープ貼り
この材料の使い方は師広瀬一良先生の自邸 にて勉強しました。 目地底の黒テープは私のオリジナルです。
またほんの少しツヤも付けている所が広瀬さんと違う所です。
広瀬邸のラワン合板目透し張りの壁天井(2012.10.3)
マンガシロ (まんがしろ)
床材をオーク材やタモ材のフローリングにするとそれに伴って、巾木や枠材を広葉樹材でそろえる事になる。
床と同じオークや、タモでそろえれば良いのだが値段が高くなる。
そこで広葉樹で値打ちなマンガシロを代用して良く使っていた。(2012.10.4)
マンガシロ
マンガシロはラワンの一種で東南アジアの木材ですが最近はラワン同様手に入りにくくなってきている。(2012.10.5)
値段も随分高くなってきた。 場合によっては中国産のタモ材の方が安い時もあるので選択の考慮が必要な時期に来ていると思う。
マンガシロは細工はしやすいのですが、のこぎりなどの刃を痛めやすいシリカを含んでいるので嫌がる大工もいる。
また時間が経つと少し黒ずんでくる。(2012.10.5)
桜 サクラ (さくら)
「和室の敷居に桜を使うものだ」とは質実剛健の名古屋の昔い大工から教わった、たぶん耐久性第一での文化の選択だと思う。
また、敷居の溝の底のカンナの仕上げ状態を見ると(指でさすると)大工の腕が分かるとも教えてくれた。(2012.10.6)
しかしサクラ以外にも桧や、杉などで溝の底に堅木で埋め木する方法もある事は随分後から知った。
しかし敷居は桜と抵抗なく反応するが少し赤みのある色が出る時は本当にこれでいいのかと迷う事もある。(2012.10.7)
本桜(2012.10.8)
最近は本桜はほとんど手に入らないので洋桜を使うことが多い。
サクラの一種で木目もよく似ているカバザクラも最近よく使われている。。(2012.10.9)
木材はもっともっと沢山の種類があって、床の間廻りでは黒檀、紫檀、鉄刀木、柿、・・などの銘木なども使われているが、
私が良く使う木はこの程度ですのでこれで木をひとまず終わる事にします。(2012.10.10)
木の次には「土を焼いた」 煉瓦、タイル を取り上げてみたいと思います。
煉瓦(れんが)
煉瓦は古くはメソポタミアの時代(今から6000年前)からあり、木の型枠に泥や土を入れ形に整えたものを
日に干した日干し煉瓦が初期のものになる。(2012.10.11)
日干し煉瓦 日干しレンガを積み上げた建物
日干し煉瓦は強度が出ないので火で焼成する焼成煉瓦が5000年前くらいから使われるようになり、木型枠も金属型枠と変化していく。
またそれに従って強度も出て建物も大型化する歴史を持つ。(2012.10.12)
エジプト、インド、中国にも伝わりヨーロッパの建築の多くは煉瓦によって積まれた建物が多い。
エジプト インド 中国 ヨーロッパ (2012.10.13)
日本では江戸末期幕末に溶鉱炉で使用され、明治時代に多くの煉瓦建築が建てられたが、関東大震災で崩壊した事から
煉瓦を主構造とする建築は無くなった。(2012.10.14)
写真は愛知県半田市にある明治31年に建てられたカブトビール工場
私の近くでは愛知県安城市と碧南市に煉瓦を生産している所がある。(2012.10.15)
私も外構以外煉瓦を使った事がないのであまり詳しくないが、煉瓦タイルを外壁に貼る時に煉瓦の積み方等の基本を多少勉強した。
積み方として 小口積、長手積、イギリス積、フランス積などがある。
小口積 長手積 イギリス積 フランス積 (2012.10.16)
煉瓦の大きさは 210 X 100 X 60 で 長手210の上に小口100を2個目地を入れて並べると納まる大きさとなっている。(2012.10.17)
一般的に焼く温度で煉瓦の色は変わってくる、焼成温度が低いと赤レンガとなり、もう少し高くすると茶色ぽくなり、もっと温度を上げていくと色が抜け
白っぽくなっていく、低温の赤レンガは強度も少なく、吸水率も高い、高温の白茶煉瓦は強度も強く、吸水率も低い
高温で焼くほど収縮や変形が起きやすく歩留まりが悪くなるので高くなる。(2012.10.18)
煉瓦積の壁に開口を空ける時崩れないようにするには、上部をアーチとするか、圧縮を利用した陸迫り(りくせり)、水平に力を流すマグサの方法となる。
ストックホルム市庁舎のアーチ開口 陸迫り(りくせまり)の納まり マグサ開口
煉瓦タイルを貼る場合もこの納まりを知って貼っている場合と無視して貼っている場合では煉瓦タイルの奥行きが変わってくる。(2012.10.19)
先日フィンランドのアルバー・アアルトの建築を見てきました、ユバスキュラ大学の本館外壁のタイルの目地は縦目地より横目地の幅が広かった!
ユバスキュラ大学 外壁目地
また目地は荒めの砂が多く入って積み上げられた表情を醸し出していた。(2012.10.20)
煉瓦建築の最高傑作 建築家ラグナル・エストベリ の ストックホルム市庁舎 (2012.10.21)
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