建築 雑コラム 26
Architecture The s Column
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イギリス、ロンドン
今回の旅行の後半はアムステルダムからロンドンに立ち寄りました。
ロンドンはイギリスの南東部にあって現在はドーバー海峡をトンネルでユーロスターが走っています、ロンドン-パリ間を2時間半で行く事が出来ます。
イギリスは何と言っても産業革命とフランス革命から始まった近代をリードしてきた国です。(2015.10.19)
近代芸術の最初の運動としてアーツアンドクラフツがあり、ウイーンのセゼッション(分離派)やフランスのアールヌーボー、ドイツのユーゲントシュティール、
スペインのモデルニズモなどに影響を与えました。
アーツアンドクラフツ運動の主導者がウィリアム・モリス(1834〜1896)です。
ウィリアム・モリス(1834〜1896) (2015.10.20)
ウィリアム・モリスは建築家ではなくデザイナーであり、詩人でもあります。
産業革命で物が大量に生産される中で、生活に使う物と芸術を一体化しようとした人です。
民芸運動にも影響を与え、現在のデザイナーの原点のような人だと私は思っています。
西洋建築史の教科書にも出てきます彼の自邸
Red House を是非見たくて寄って来ました。
(ロンドンVictoria駅からSoutheastem鉄道にて30分ほどBexleyheath駅下車徒歩20分)
Red House (1959年) (2015.10.21)
レンガ造3階建ての住宅で敷地廻りに日本の様にレンガ造の塀がめぐっていて大きな敷地の中には農地や家畜小屋もあって
生活感の漂う感じがあります。
裏のこちらの面はあまり写真に出ませんが私はこちらのファサードが好きです。(2015.10.22)
内部の家具、壁、天井などすべてデザインされています。(2015.10.23)
壁紙です(2015.10.24)
恩師志水正弘先生が設計された熱海の旅館 蓬莱の 別館 Villa Del Sol で使われていた本物の壁紙がありました。
壁紙の版木(2015.10.25)
京都 唐長で見せてもらった版木とそっくりです、日本の襖紙とイギリスの壁紙がそっくりな事に大変興味を覚えます。
ウィリアム・モリスから紹介しましたので時代的に古い建物から紹介します。
次に磯崎新が評価していたジョン・ソーン(1753〜1853)が設計したダリッジ・ピクチャーギャラリーに行きました。(Orping Line West DulWich駅)
ダリッジ・ピクチャーギャラリー(1817年) (2015.10.26)
新古典主義のレンガ造で左右対称の建物です。 どこが良いのか分かりませんでしたが、内部に模型がありました。
模型
なるほどこの模型には玄関の上に特徴的な屋根があって窓廻りもずっとこちらの方が良いのですが、イギリスでもこんなマイナーな改装をするのだろうか?
少し残念な気持ちの残る建物でした。
(近代建築風に屋根をとったのか?とっても味気ない建物になってしまった、これはモダニズム建築に通じるのか?)(2015.10.27)
産業革命の時代この駅から蒸気機関車が出発する風景を思い出す事が出来るパディントン駅構内です。
パディントン駅(2015.10.28)
柱や梁は産業革命当時の物だそうです。(2015.10.29)
国会議事堂(ウェストミニスター宮殿)でビッグベンの愛称でゴシック建築の代表とされる建物です。
国会議事堂
1834年にウェストミンスター宮殿のほとんどが火災で焼失しコンペによって国会議事堂の設計をイギリス政府は企画し、
建築家チャールズ・バリーと建築家オーガタス・ウェルビ・ビュージンが設計した。(2015.10.30)
ビッグベンの隣にありますこれもゴシック建築の代表の
ウェストミンスター寺院(イギリス王家の寺院)
ゴシック建築らしい ウェストミンスター寺院 (2015.10.31)
ウェストミンスター寺院 内部 (2015.11.1)
1666年にロンドンは大火となって街の多くを消失する、この大火をきっかけに木造建築は禁止され現在の街なみへと復旧する。
丁度日本の江戸の街が同じころ幾度となく大火になって屋根には瓦を使う様に規制された。(日本の家屋の屋根は瓦の歴史はまだ300年)
良く似た歴史背景で面白い。
この復旧に携わった建築家がクリストファー・レンで彼の代表作がバロック様式のセントポール大聖堂です。
クリストファー・レン(1632〜1723)(2015.11.2)
セントポール大聖堂(1710年)(Brackfriars駅)(2015.11.3)
ロンドンの西近郊に世界遺産になっている
キュー・ガーデン(地下鉄緑ラインKewGarden駅)植物園があります。
大きな植物園ですがその中にフランスのクリスタルパレス(今はない)同様に有名な温室でパームハウスがあります。
パームハウス(1848年) (2015.11.4)
建築家デマシス・バートンと技師リチャード・ターナーの設計で正にモダニズムの材料、鉄とガラスで建てられた建物です。
細部もきっちりデザインされています、下右から2つ目が出入り口ドア(2015.11.5)
内部から 各部材の大きさも無駄なく繊細で最近の高層ビルのファサードを見ているよりきれいに思いました。(2015.11.6)
足元にもすこしお洒落に、でもこれ構造的にも必要な物を装飾して遊んでいる(2015.11.7)
パリの商店街はパサージュといいますが、ロンドンでは主にアーケードと呼ばれています。
オールドストリートアーケード(2015.11.8)
バーリントンアーケード 入口にマントを羽織った警備員?案内人?が立っている。
バーリントンアーケード(2015.11.9)
ピカデリーアーケード(2015.11.10)
ロイヤルアーケード(2015.11.11)
どのアーケードも少し高級品が売られていてパリのパサージュと違った雰囲気でした。
どちらかと言えば私はパリのパサ-ジュノ方が好きな空間です。
パリのパサージュ(2015.11.12)
ロンドンには多くの近代、現代建築があります。
CIAMを解散に導いたアリソン&ピーター・スミッソン夫妻の作品から見てみます。
アリソン&ピーター・スミッソン(1928〜1993)(1923〜2003) (2015.11.13)
エコノミストビル(2015.11.14)
ル・コルビュジェ、ミース・ファン・デル・ローエ、ワルター・グロピウスなどの巨匠がつくった近代建築の国際会議CIAMの第10回会議を
主導したアリソン&ピーター・スミッソンとチームX はCIAMがめざした静的な都市感を批判して動的な都市を提唱しCIAMを解散した。
しかしその後それにふさわしい空間が生まれたと私は記憶していない。
このエコノミストビルはアリソン&ピーター・スミッソンの代表作であるが静的な近代建築そのもので何もCIAMを崩壊する意味が見いだせなかった。
エコノミストビル 詳細(2015.11.15)
イギリスで有名な建築家と言えば、ノーマン・フォスターです。
ノーマン・フォスター(1935年-) (2015.11.16)
フォスターはアメリカのイェール大学卒業後バックミンスター・フラーの事務所で働き、その後イェール大学の同級生のリチャード・ロジャースとで
お互いの夫婦を入れてチーム4を結成する、その後1967年にフォスター アソシエーツを設立しました。
良く知られている作品では香港上海銀行、日本ではセンチュリー・タワーが東京お茶の水にあります。
香港上海銀行 (1985年) (2015.11.17)
センチュリータワー (1991年) (2015.11.18)
今回はロンドンの街並みで一番目につく砲丸のビル セント・メリー・アクス からご紹介します。
セント・メリー・アクス (2004年) (地下鉄黄ライン Aldgate駅) (2015.11.19)
スイス再保険会社(スイス・リ保険】の本社 事務所ビルです。
同じような砲丸のビルはバルセロナにフランスの建築家ジャン・ヌーベルが設計した
水道局がありますが、こちらのセント・メリー・アクスの方が数段良い
と私は思います。
見上げたガラスの納まり ひし形と三角の組み合わせで構成されている。(2015.11.20)
エントランス部分も庇を嫌って掻き込んで造られている。
細部のディテールもとてもきれいに納まっていて感心しました。
保険会社のオフィースビルで内部も見たかったのですが、警備がしっかりしていて入る事も内部の写真も撮れませんでした。(2015.11.21)
ロンドンにはフォスターの建築は多くあります。
古いものから観てみましょう。
2000年にできたテムズ川を渡るミレミアムブリッジです。
ミレミアムブリッジ(2000年) (2015.11.22)
ブリッジ端部 折り返して入る事で端部は宙に浮きハイテクな表情をしている。 (2015.11.23)
テート・モダンからセントポール大聖堂への軸線上にブリッジが掛かっている。 (2015.11.24)
この橋は竣工後すぐに不具合が生じてしばらく使用中止となったそうです、イギリスではフォスターの人気が悪い様な話も聞きますが、
私は日本の丹下健三同様、イギリスではノーマン・フォスターの建築は素晴らしいと思います。
同じくテムズ川沿いにあります
ロンドンシティーホール(市役所)(2002年)
ロンドンシティーホール(地下鉄Rondon Bridge駅) (2015.11.25)
きのこの様なかわいい建物です、ガラスで覆われています。
モダニズムの四角いガラス張りの建物から違ったガラス張りの建物を創ろうとしている気持がよく伝わります。
三角のフレームで納めた部分と四角のフレームで納めた部分との接点の詳細です、深い目地で納めています。(2015.11.26)
1階から地下に掘り込んでループ状のスロープのあるホール
私が感心した大英博物館のグレートコートのデザインは中庭を改装して全体の中心となる一体感を持たせた素晴らしい空間だと思いました。
大英博物館グレートコート(2000年) (2015.11.27)
次にリチャード・ロジャース(1933年-)ですが、彼はイタリア出身で、ロンドンのAAスクールを卒業後アメリカのィエール大学でフォスターと出会いました。
リチャード・ロジャース(1933年-)
リチャード・ロジャースを有名にしたのはイタリアの建築家レンゾ・ピアノと一緒に設計したパリのポンピドーセンターです。
ポンピドーセンター(1972-1978) (2015.11.28)
ロンドンではまずロイズ・ビュルディング(1979年) 私が大学卒業後すぐに建ったハイテクの建物でとても印象深い建物です。
ロイズ・ビュルディング (地下鉄黄ライン Aldgate駅)(2015.11.29)
セント・メリー・アクスの近くにあって現在このロイズ・ビュルディングの前にロジャースはロンドンで一番高くなる予定のリーデンホールビルを建設中です。
ロイズの向へに建設中のリーデンホールビル(2015.11.30)
ロイズ・ビュルディングはコンクリートのフレームにステンレスのボックスと、設備の配管が外部にむき出しになっています。
コンセプトはポンピドーセンターとよく似ています。
ステンレスと配管が取り付くハイテク (2015.12.1)
ほとんど空調配管のこんな面もある(2015.12.2)
ディテール
よく観ていくと菊竹清則、黒川紀章のメタボリックのボキャブラリーが各所にあってその当時を思い浮かべる事の出来る建物です。
予想より劣化していなくガラス張りの最近のビルより見ていて楽しくなります。(多分リフレッシュ工事が最近されたのだと思います)
リチャード・ロジャースのメカニックさは私は意外に好きかも知れない。(2015.12.3)
ロイズ・ビュルディングの近くに同じ系列のロイズ・レジスターがある。
鉄骨造でリチャード・ロジャースらしいメカニックな建物です。
ロイズ・レジスタンス (2015.12.4)
ガラスのつるっとした建物に比べて、意外と街並みに馴染んでいて違和感はない。
建物下部の外付ルーバーの詳細 外壁面をキャンティーで出している所もなかなか良い(2015.12.5)
エレベーター、及び階段室をガラスで囲い人の動きや、エレベーターの動きが外から分かる。
外部フレームはブルー色で、階段部スチールは黄色、エレベーターは白色と色分けされている。
この色の使い方もポンピドーセンターと共通する。(2015.12.6)
近代的なオフィースビルが立ち並ぶMoorgate駅(黄色ライン)近くに88wood Stビルがある、
近くにノーマンフォスターの設計した1 London Wallビルや、100 Wood Stビルもあるがよくあるガラスのビルで紹介するまでもない。
各階にスリットをとったガラスのBOXが高く持ち上げられている(2015.12.7)
側面部の耐震筋違もデザイン表現として外部に出してある(2015.12.8)
日本でよく見かける、後から施工された耐震補強の見にくいバッテンに似ています。
しかしこの写真の細部をよく見てください、ディティールにこだわって美的に処理すればこれくらい綺麗に納めれると思いました。
私が耐震補強の仕事をする時はこれを見習おうと思います。
リチャード・ロジャースの建物はどれもディテールがきれいです。また彼らしいコンセプトが伝わってきます。
階段部分のディテール(2015.12.9)
リチャード・ロジャースと共同でパリのポンピドーセンターの設計をしたイタリアの建築家レンゾ・ピアノが設計した現在ロンドンで一番高いビルが
シャドービルです。(グレーライン、LondonBridge駅)
レンゾ・ピアノ (1937年 -)
ガラスの、三角の高いビルなので遠くからも良く分かります。(2015.12.10)
建物に近づくと表情が変わります。(2015.12.11)
ガラスのカット面に影を持ち込んだ所が、とても良く考えられた所です。
下から見上げた所、太陽電子のシートを貼ったガラス庇の高さが高く 納まりもリチャードロジャースを観た後ではイマイチ物足りない感じがしますが、
(2015.12.12)
ノーマンフォスターのセント・メリー・アクスと匹敵するくらいこのシャドービルも高層建築では評価されてよいビルだと思います。
ロンドンの高層ビルで私が今回の旅で考えさせられた風景に,
この風景があります。
テムズ川越しの丘に建つ高層建築群
この風景を見て皆さんはどの様に感じるでしょうか?
丘の中央に教会の屋根が見えるのが分かります、かってはロンドンも街並みの屋根が並び丘となってその頂上に教会の屋根がある
とても美しい街並みだったことが想像できます。
そこにツクツクと生えたキノコの様な高層建築は私にはロンドンの街並みを崩壊するものとしか見えないのです。
特に左手前の頭の大きな高層建築は最悪だと思います。
建物単体ではデザインされ個性豊かな高層建築も群となると協調性が無く、東京以上にハキダメ状態になっているのではと思いました。
この事はオランダのロッテルダムでも感じた事でロンドンでも再び強く感じました。(2015.12.13)
前出したノーマン・フォスターのテムズ川にかかるミレミアムブリッジの袂に、1947年に造られた発電所を近代美術館に改装した建物がある。
テートモダン美術館でスイスの建築家ユニット ヘルツォーク&ドムーロンがコンペを勝ち取って設計した。
ヘルツォーク(1950年〜)&ドムーロン(1950年〜)(2015.12.14)
ヘルツォーク&ドムーロンは建築の表層をモチーフに展開している建築家ユニットで北京オリンピックのメイン会場である通称鳥の巣を設計している。
北京国家体育場(鳥の巣)(2008年)
また日本では表参道に建つガラスの建物のプラダがある、(この場所は私が東京で勤めていたLAND建築事務所のあった斜め向えの場所にあたる)
(以前は大きな邸宅があった場所です)
プラダ青山店(2003年)(2015.12.15)
テートモダン美術館(2012年)(2015.12.16)
レンガ造の旧発電所の上にガラスのBOXをのせて、内部を改装している。
かなりスケールの大きな建物です。(2015.12.17)
発電所なのですが、細部もしっかりデザインされた建物です。(2015.12.18)
なぜかレンガはフランス積(2015.12.19)
テートモダンの休憩所からミレミアムブリッジ、セントポール大聖堂を見た風景(2015.12.20)
実はこの美術館まだこれから増築計画があってその模型がありました。
後ろの先端のないピラミッドがひねったような部分が今後の増築部分(2015.12.21)
今後の増築部分の外壁の感じの模型 (透けた感じが面白そう)(2015.12.22)
イギリスの最後に東京オリンピックメイン会場で問題となり、皆さんもよく知っている イラク出身でイギリスに事務所のあるザハ・ハディッドを紹介します。
ザハ・ハディッド(1950年〜)
私の大学の同級生
高崎正治はAAスクール当時ザハとは親しい友人であったような話を彼から聞いた事がある。
高崎とも共通する曲線を使い流線的なデザインが特徴な建築家で、かってはアンビュルドの建築家と言われていたが、コンピューターの発展と共に
建築可能となって、現在世界的に有名な建築家となっている。(2015.12.23)
大英博物館の近くにある
AAスクール(2015.12.24)
まず、郊外にあります
エヴリン・グレース・アカデミー(Victoria駅→Brixton駅)
エヴリン・グレース・アカデミー(2010年) 変形したBOXが重なっている様な建物ですが、意外に構造はRC造ラーメン構造
校舎と運動場トラックが一体化してるところがザハらしい(2015.12.25)
ロンドンオリンピック水泳競技場
アクアス・センター(赤ラインStratford駅)
アクアス・センター 軒裏は以外に木に小幅板グレーのペンキ塗り(2015.12.26)
ハイドパークの中にある
サーベンタインギャラリーで毎年著名な建築家が短期間の仮設ギャラリーを創っています。
ザハのギャラリーを移転して、少し離れたサクラギャラリーの隣に付けてレストランにしています。
ハイドパーク、サクラギャラリーレストラン
内部(2015.12.27)
かなり面白い建物ですが、私は隣のサクラギャラリー本館のプロポーションの方が好きです、またハイドパークの自然に本館の方が良く馴染んでいました。
サクラギャラリー本館(2015.12.28)
志水ゼミの平井先輩からロンドンの情報をお聞きした中に
ザハ・ハビッドのギャラリーがありました。是非見たく寄って来ました。
ザハ・ハディッドギャラリー(イエローラインBarbican駅、101 Goswell Road London)
ギャラリー内部(2015.12.29)
地下ギャラリーへの階段
3Dプリンターでの模型(2015.12.30)
他の模型
3Dプリンターでの東京オリンピック メイン会場の模型
多くの模型が展示されていましたが、すべて3Dプリンターでの模型でした、ザハの様な建物はコンピューターによって3次元に設計され
模型もできれば現場も3Dプリンターの様に出来たら建築の可能性も生産コストも画期的に変化するのでしょう。
今年も一年無事にコラムを書く事が出来ました、ありがとうございます。(2015.12.31)
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