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建築  雑コラム 14 

Architecture         The s   Column    

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フィンランドの建築

次に、フィンランドの建築家 アルヴァ・アアルトの建築をいくつか観て来ました。

アルヴァ・アアルトは1898年生まれですから日本の建築家ですと1894年生まれの吉田五十八、

1895年生まれの堀内捨巳、今井兼次と同世代になります。(2013.6.1)

(2013.6.2)

アアルトはライト、コルビュジェ、ミースと並ぶモダニズム建築の巨匠のひとりですが、

大学卒業後彼の尊敬するスエーデンのアスプルンドの事務所の門を叩くが空が無く、入所できないが、

アスプルンドとの交流は一生続いたそうです。(2013.6.3)

ですから他の巨匠はインターナショナルに均質な空間を求めたのに対し、アアルトは北欧の地域性を重んじた

作品が多くその作品も北欧地域にほとんどがあります。(2013.6.4)

今回は彼の事務所と自邸のあるヘルシンキと、独立して最初に事務所を置いたユバスキュラの作品を中心

に観て来ました。
(2013.6.5)

スタジオ(事務所)と自邸は徒歩十分ほどの近くにあり、ヘルシンキ市北部の閑静な住宅地にあります。
(トラム4番Tilimaki下車) アアルト財団ホームページに地図があります。82013.6.6)

                            

                            アトリエ中庭(2013.6.7)



アトリエ(2013.6.8)


木造二階建てで、アアルトがよく選択する中庭を囲むL型プランです。


事務所スペースは二階にありハイサイドからの採光が事務所中を満たしていました。


一階には多くの模型を展示したホールと、スタッフの食堂、事務スペースなどがありました。(20136.9)



            

            模型、家具などが展示したあるホール(2013.6.10)


私は今まであまりアアルトを意識した事はなかったのですが、私の創ってきたデザインに近い物を感じました。


知らないうちに、アアルトの影響が日本の建築に伝わり、そして私に伝わっていたのかも知れません。(2013.6.11)




造り付けの家具(2013.6.12)


アアルトは日本建築に影響を受け西洋の建築家には珍しく引き戸を使います。


白い壁と木の素地の色の対比で室内空間をまとめるのも私が30年間やってきた手法と同じものを感じます。(2013.6.13)


ただアアルトは、北欧の独特な光をハイサイドや、トップライトからとてもうまく、柔らかく取り入れていました。これは物凄く勉強になりました。


また通風用の小窓など詳細にいたって神経を使った、棲み易そうな空間でした。(2013.6.14)


アアルトの日本趣味を見つけました。

                            

                             庭の隅に明らかに日本庭園の石積の修作の後がありました。(2013.6.15)


アアルトの自邸もスタジオ同様公開されていますが、公開時間が決まっていますのでアアルト財団ホームページで確認が必要です。



外国で日本の様に塀のある風景は珍しいのですが、アアルトの住宅も、スタジオも塀がありました。(2013.6.16)




アアルト自邸 塀とエントランス 北側(2013.6.17)


敷地は湖を望む勾配のある丘の中腹で、北側のエントランス側から見ると建物は大きく感じませんが、南からは大きさを感じます。


                             

                         南側 右二階部分は小幅板縦張り、一階及び左部分はコンクリートペンキ塗り(2013.6.18)


樹木が良く茂って、二階ベランダから湖は見えませんでした。また、蔦が外壁を覆っていました。


一階にはリビング、アトリエ、ダイニング、キッチン、などがあり、二階は寝室、子供部屋、浴室、ベランダ、サウナ室などがありました。(2013.6.19)


一階のリビングとアトリエは大きな引き戸(私も良く使う手法)で仕切られていました。


半開き状態のリビングと、アトリエ間の大きな引き戸(2013.6.20)


アトリエは吹抜けのある大きな空間で壁には造り付けの本棚があります、またアトリエから二階の寝室に抜けれる秘密の通路があります。(2013.6.21)


アトリエのコーナーにある、アアルトが普段使っていた製図版で、この窓の景色を見ながら、ここで多くのスケッチをしていたそうです。


アアルトのスケッチは線が波を打っています。(ある説ではアル中とも言われています)


たぶんここでお酒を飲みながらスケッチしていたのでしょう!


このページの最初にあるアアルトの写真もこの机の右側から撮った写真です。


          

          アアルトの製図台(2013.6.22)


アアルトの自邸からタクシーで15分ほど北西に行くとヘルシンキ工科大学(現在はAalto Universityに校名を変更している)に着く。


ヘルシンキ工科大学(2013.6.23)

広いキャンパスに点在する校舎は煉瓦タイル貼の外装で統一されて落ち着いたキャンパスでした。

扇型で斜めにカットされた屋根はハイサイドの採光に繋がって、下部は地面からの延長の階段へとつながっている。

地面と外壁と屋根面が連続する構成は画期的な構想で1958年に建てられたとは思えない斬新さである。(2013.6.24)

内部の階段教室はかなり大きな教室でした。

                            
                            内部階段教室(2013.6.25)

アアルトのデザインボキャブラリーで良く使われている、セットバックの列柱エントランス。

そしてその柱の下部にはタイルや鋼板リングなどの根巻きがされている。(私はこれをレッグウォーマー柱とニックネームを付けました)


セットバックエントランスそしてレッグウォーマー柱の列柱(2013.6.26)

ホールには建物によって違ったディテールを持つデザインされた階段。(アアルトは階段のデザインがとてもうまい)

外部から内部に徐々に下げられた天井

                                   
                                   ホール(2013.6.27)

そしてこれもアアルトのお決まりのデザインボキャブラリーであるハイサイドとトップライト


ハイサイドとトップライト(2013.6.28)

今から60年前にこの空間が出来ていたとは!驚きです。

アアルトの作品は最近メンテランスをされている様で、木製サッシなどは新しい物に交換されている建物を多く見かけました。

壊されるのではなく、メンテランスされ長く愛される建物になっているのでしょう。うらやましいばかりです。(2013.6.29)

文化とはこうやって残されていくのでしょう!  日本も少し見習ってもらいたいと思います。

アルバー・アアルトはフィンランドの国民に本当によく愛されています。 ユーロになる以前の紙幣にも肖像が載っていたそうです。

それに比べ、日本には建築家を愛する風土はないのか? 建築家がまだそこまで育っていないのか? 寂しいばかりです。
(2013.6.30)

ヘルシンキにあるアアルトのその他の作品を数点紹介します。

まずは、晩年の作品のフィンランディアコンサートホール

               
               フィンランディアコンサートホール(2013.7.1)

外壁はホワイトカラーラの大理石貼り、でかなり大きなスケールの建物ですがこの大理石のみで統一感を持たせていますが、

全体としては寄せ集められて創られた感じがまだ残っています。(少しデザイン的に消化不足の感じがあります)

ロビーのみ特別に見学許可をもらってみてきました。(2013.7.2)


ロビーのレッグウォーマー柱

                                          
                                          アアルトのコーナー(2013.7.3)

ホールの中などもっと見たいところがあったのですが中に入れただけでも良しとしておきましょう。今度はコンサートを聴きにいきます!

アアルトの中期のホールで是非見たかったのですが、あいにく工事中で(アアルトの作品の多くは最近木枠など悪くなった部分を、復旧しているようです。)見られませんでした「文化の家」また今度ヘルシンキに寄った時に見に行きたいと思います。(2013.7.4)

                 
                 「文化の家」工事中(2013.7.5)

ヘルシンキ市内でアアルトの建物で有名なアカデミア書店は町の中心のストックマンデパートの横にあります。

後期1969年の建物ですがレンガの街並みの中でグリッドのカーテンウォールのこの建物は当時モダンの先端だったと思われます。


アカデミア書店 ファサード(2013.7.6)

内部は三層吹き抜けの空間を中心としたプランです。吹抜けの上部には下部にも上部と同じ様に突出した、主張性の高いトップライトが

街中の建物に光を落としています。外部からはこの明るさは予想できない所がさすがアアルトと納得させられました。

                   
                   アカデミア書店内部(2013.7.7)

アアルトの作品には彼の独特のボキャブラリーがいくつかあります。 その一つの取っ手です。
建物の利用者の年齢に合わせて取っ手が一つ、二つ、三つと増えていきます。
その当時のユニバーサルデザインとも考えられます。

                                          
                                     子供も利用するこの建物は低い位置にも子供用の取っ手が付いています。
                                      (2013.7.8)

グリッドのファサードのデザインの建物は他にもアアルトは建てています。
アカデミア書店の隣の隣のビルで「鉄の館」1955年ですからアカデミア書店より以前の建物です。


「鉄の館」 二階にスカイライトのホールがあるのですが、入場規制があっては入れませんでした。(2013.7.9)



                                      
                                      ヘルシンキ市内港湾近くに建つエクソ・グートツアイト・ビル1962年

エクソ・グートツアイト・ビルは白くて目立つ建物ですが、ファサードはカーテンウォールではなく大理石張りでした。
アアルトのボキャブラリーの一つ、セットバックエントランスと列柱が使われています。(2013.7.10)

アアルトは1923年、25歳の歳でユバスキュラに初めて事務所を持ちました、27年までの4年間をユバスキュラ、その後27年〜33年までトウルク、

33年〜ヘルシンキに事務所を持っています。(2013.7.11)

ヘルシンキからユバスキュラまでは鉄道の特急で3時間半くらいかかります。車窓は湖と林が点在し、湖近くにはサウナ小屋がある風景は

フィンランドのイメージにぴったり合う風景でした。


車窓(’2013.7.12)

ユバスキュラにはアルヴァ・アアルト美術館があります。前述のアルト財団ホームページに詳細があります。

                              
                              アルヴァ・アアルト美術館(2013.7.13)

外壁は半円形と、平の磁器タイル張りですが、半円形のタイルが縦のストライプとなって平坦なタイル張りの外壁とは趣が違います。


内部(2013.7.14)

      
椅子                                          様々に工夫された木材量の見本(2013.7.15)

中にはアアルトデザインの椅子や、建築のスケッチ、模型、そして木を貼り合わせたり、組み合わせたりした見本が並んでいました。

アアルトは材料にこだわります。タイルにしろ、木にしろ見本を作り込んで納得して使っていた様子が良く分かります。(2013.7.16)

アアルト博物館のすぐ隣に傾斜地に建つ中部フィンランド博物館がある、展示は民族博物館のような展示であるが、ハイサイドを塞いであったり、

天井壁が黒く塗り替えられていたりして、少し残念に思いました。(2013.7.17)


中部フィンランド博物館(2013.7.18)

この建物は壇上になっており見下ろすと下にアアルト博物館の屋根が見えトップライトの納まりが良く分かります。
             
                               
                        中部フィンランド博物館の1階の屋根(芝張り)の向こうに見えるアアルト博物館のトップライト(2013.7.19)

この傾斜地を上がった一帯がユバスキュラ教育大学(現在ユバスキュラ大学)のキャンパスが広がっています。

ユバスキュラ大学は1953年〜1957年に建てられオーディトリアム、図書館、プール、ゼミナール棟、学生食堂などがあり針葉樹の木立の中にある

キャンパスです。(2013.7.20)


オーディトリアム正面玄関(2013.7.21)

 
                                        
                                        エントランス内部(2013.7.22)


レッグウォーマーの柱とセットバックする天井(2013.7.23)

これは珍しい木造の食堂で小屋組みを木造トラスで構成しています。

                                   
                                   木造トラスの食堂2013.7.24)

ユバスキュラ大学で私が一番気に入った空間は図書館です、このスペースは建物の中に入り込んだ空間で見つけるのに苦労しました。

アカデミア書店の空間と似ているのですが、窓や、トップライトからは光しか入ってきません、外部環境への繋がりが無く「光の中に空間がある」部屋です。

日本建築にはこのような空間はありません。(2013.7.25)

          
           ユバスキュラ大学図書館

入口も中二階にあり、二階部分は書架の回廊になっています。(2013.7.26)

ユバスキュラにありますアアルトの他の建物も紹介します。

アアルトの初期で1925年竣工のユバスキュラ労働者会館写真では屋根が写っていませんが寄せ棟屋根になっています。


労働者会館(2013.7.27)

1階にはドーリア式の柱が並びますが2階の外壁はモダニズムを感じさせるデザインです。

新古典主義からモダニズム建築に移る時期の建物の状況が良くくみ取れます。

その当時はこの凹凸のない外壁がかなりモダンに感じたのでしょう!(2013.7.28)

自衛団のビルはタウンシアターの後1929年竣工した建物ですが現在修復中で仮囲いに書かれた外壁が残念賞です。

                                 
                                 アアルトの建物で修復中の現場はこれで3件目です。(2013.7.29)

ユバスキュラ行政文化センター

この建物も木製サッシなど外部木部が修復工事中でした。


ユバスキュラ行政文化センター(2013.7.30)

そしてアアルトの末期1982年に竣工したユバスキュラタウンシアター

外部はかまぼこ型のタイル貼で外観からイメージする開放感と、内部から見る解放感がかなり違って見えます。


ユバスキュラタウンシアター外観(それ程開放的な建物に見えない)(2013.7.31)

                             
                             ユバスキュラタウンシアター内観(開放的なロビー)

この違いは上部の縦型ルーバーによります。このルーバーは横からの光も反射して室内に光を差し入れています。(2013.8.1)

ヘルシンキにあるアアルト以外の建築も紹介します。

まずはエリエル・サーリネンの1914年に竣工したヘルシンキ中央駅です。

 
ヘルシンキ中央駅(2013.8.2)

エリエル・サ−リネンはヘルシンキ中央駅のコンペにナショナル・ロマン主義の案で受賞しました。

ナショナル・ロマン主義はスエーデンのラグナル・エストベリのストックホルム市庁舎も同様で塔をデザインの中心に置く事が多い。

このヘルシンキ中央駅も右奥にピナクルを戴く塔がある。(2013.8.3)

サーリネンは1923年にアメリカ、ミシガン州に移住しアメリカで、活動し、また建築教育にも携わる。

アメリカの多くの摩天楼のデザインはサーリネンの塔を模倣したものが多くあると言われる。

また、エリエル・サーリネンはあのアメリカを代表する建築家でジョン・F・ケネディー空港TWAターミナルを設計したエーロ・サーリネンの父親である。
(2013.8.4)

次に1969年に完成したテンペリアウオキ教会を紹介します。

                                 
                                テンペリアウオキ教会(2013.8.5)

この教会は福音ルター派のキリスト教会で大きな岩をくり抜いて創られていますので部屋の壁はくり抜かれた岩そのままでその上にぐるっとまわりを囲む

トップライトで支えられたUFOの底の様な天井と屋根が特徴です。設計はスオマライネン兄弟ですがこの作品以外で彼らの名を聞く事はありません。

素材感も、空間も、ディテールも良くできた作品だと思います。(2013.8.6)

最後はヘルシンキ中央駅の近くにあります。キアズマ/ヘルシンキ現代美術館です。


キアズマ/ヘルシンキ現代美術館(2013.8.7)

この建物の外観は見る角度によって全く違った表現を持ちます。

                                      
                                      キアズマ背面より(2013.8.8)

この建物は1992年にコンペが行われて、アメリカの建築家スティーブン・ホールが優勝し彼の代表作となった建物です。

1998年に完成しました直線の少ない建物で、いろんな要素の空間、や材料の入り混じった建築ですが、違和感なく詳細も繊細にまとめられた秀作と思います。(2013.8.9)

              
内部スロープ                                      内部階段(2013.8.10)


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